[小 説/RO小説/moe6]

P007 終わりたい世界 / 2005-04-07 (木)

 背中に痛みを感じ目を覚ますと、僕は古城の城壁の上に座らされていた。
「それでは、頑張ってくださいですぅ」と黒子と名乗った一人が言い去っていく。
 何が起こったのか思い出しながら立ち上がる。体には赤青白の三色を基調とした鎧がつけられていた。右腕には白と青のガントレット。手にはつや消しのガンメタリックのT字状の武器を握っていた。左腕のガントレットには赤黒の縦長の盾が付き、背中に目をやると黒と赤の翼のような物がついていた。脚甲は足下に行くに従って広がっており脚を覆う部分は妙に大きかった。
「な、なんなんだろこの派手な鎧……」
 ふと、城壁の下に目をやると、先ほどの怪物達に囲まれている、ユキ姉の姿があった。それを見て自分たちが置かれていた状況を思い出す。
「そこまでよ、世界にあだなす悪党達!その女性を解放しなさい!」と高らかに叫ぶ。
 その声に気付いたのか、怪物達がこちらに目を向ける。
「ボス、何かMS少女っぽい奴が城壁にいますよ!」と叫びながらボスと呼ばれた人の方を向く。
「馬鹿、ボスなんて呼ばないでよ」と答えるネコミミを着けた女性。
「……ってボスってユキ姉かよ!」と思わず突っ込んでしまう。
「私の事をユキ姉って呼ぶなんて、あなた一体何者です!」と問い返す。
 本気で分からないのだろうか……。問われて名乗るのが恥ずかしいので、答える気は無かったのだが、何故か口が動いてしまう。
「悪ある所に正義あり。疾風の様に現れ疾風の様に去っていく、通りすがりの美少女ネタ戦士ウェポンマスターメル。月に変わってご奉仕するにゃん♪」
 と言った後、「とうっ」と城壁から飛ぶ。
「……って何飛んでるのよ私ーーーーー。し、死ぬーーーー」
 数秒後、ドコッという音と共に地面に埋まり込む。
「……イタヒ……デモイキテル」
 体中に痛みを感じはするが、生きてることを実感する。何とか体を動かし埋まった穴から這い出ると、呆れた目で見る悪役御一同の姿が目に入った。
「か、帰りたい」そうつぶやきながら、一体どうしてこんな事になったのか考える。そこでふとあることに気付いた。ユキ姉が敵のボスなら、助ける必要はないのではと。
 そうと決まれば。
 脚を肩幅に広げ、両手を下にしてピシっと背を伸ばし立つ。
「私はウェポンマスターメル」
「それはさっき聞いた」
「疾風のように現れ、疾風のように去っていく」
「それも聞いた」
 そして私は右腕を上げ一差し指で敵を指し示し。
「悪魔の諸君!」
「なんだ?」
「さらばだ!」
 そう言って街の方に向かって全速力で駆け出す。かなり離れた頃後ろの方から「……ちょ、ちょっとまてーーーー」と言う声を聞いたよな気がした。